dolce…意味を確かめてみよう。
甘い、デザート、可愛い…音楽の表情記号での意味−甘美に−はこれに由来する。
今回はそれぞれの意味に沿った曲を紹介しよう。
dolceな曲たち
甘美な曲
前回までで挙げたフランクのソナタやシューマンの諸作は十分に甘美である。ただ、繰り返し書くのは文章を書く訓練としてはハードルが低すぎると思うし、同曲を取り上げても違うことが書ければそれでもいいのだがそれは厳しい。なので別の曲を取り上げよう。
ガブリエル・フォーレ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番 イ長調 作品13
おそらくフォーレの室内楽作品では最も演奏される曲で録音も多い。
伸びやかな明るい旋律、快活さを持っている。かなり控えめに演奏しようとも甘美さを隠しきれない。逆に、どんな曲も甘ったるく演奏してしまう演奏家によるものは、砂糖の数百倍の甘みを持つといわれる人工甘味料のようにしつこい。
いつかは弾けるようになりたい曲でもある。
デザート代わりの一曲
食後に出される果物や菓子…そんな一曲を選ぼう。ただ、このシリーズの最終項目は「アンコールの曲」ということなので、これとは被らないようにしたい。
どう選べばいいか。自分で演奏会をするときにアンコールで演奏したいようなものを選ぼう。
ガブリエル・フォーレ:子守唄 作品16
1曲だけならこの曲だし、2曲弾くならこれは2曲目、「演奏会はこれでお開き、おやすみなさい」。
可愛い曲
フランツ・シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125
思いついたのはこの曲が最初である。2018年7月15・16日にサントリーホールで行われた、【アラン・ギルバート首席客演指揮者就任披露公演】都響スペシャルで演奏され、わたしは2日目に聞きに行った。
作曲の経緯や初演日、曲の概要はWikipediaの該当ページや名曲解説書が教えてくれるだろうしここでは省く。
今までシューベルトの交響曲は、演奏したことがある第7・8番(古い数え方だと第8・9番)と、演奏機会の多いように思う第5番しか聞いたことがなく、こうして演奏会で取り上げられでもしなければ聞かなかっただろう。
全体的に軽やかで、特に第4楽章がすばしっこく可愛いと思った。短調で書かれた第3楽章が作品を軽やかですばしっこいだけの曲に終わらせないように適度に引き締める。
最初に聞いたときはそういう演奏で、他にジョナサン・ノット/バンベルク交響楽団などモダン楽器による演奏では同様の印象を抱いた。上記の時代楽器による演奏ではあまりそういう感じはしないものの、モダンとの違いが出て楽しめるのではないだろうか。