ソメイヨシノはとうに散って、ヤエザクラも葉がちらほら見えてきた。気温も夏日の日が増えてくる、ああ初夏だ。プロオケは6・7月のシーズンオフが近い。
今日のお題は「交響曲といえば?」。弾きたい曲や、弾いた曲聞いた曲で印象に残っているものや演奏時のエピソードなどを語っていきたい。
交響曲といえば?
交響曲に対する思い
演奏会のプログラムでメインの楽曲になっている以上、鑑賞でも演奏でも意識せざるを得ない。鑑賞においては、交響曲を複数書いた作曲家がいるならば、例えばLvBの作品では第何番を聞けば全曲聞いたことになる、といった演奏会を聞きに行く目標になるし、演奏活動ではあと第何番を弾けば全曲演奏したことになる、という目標になる。
弾いた曲
今まで弾いた曲についてすべて書くと時間が足らなくなるので、特に印象に残った曲を取り上げたい。
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
大学3年の6月に開催された大学オケの定期演奏会でメインに取り上げたのがブラームス作曲 交響曲第1番 ハ短調 作品68(通称ブラ1)だった。
指揮者はウクライナの大物で当時ボン・ベートーヴェン管弦楽団音楽監督に就任を予定していたローマン・コフマンで、その大学オケには2回目の客演となった。1回目の客演を経験した先輩からは「とにかく怖い」という前評判に恐れおののいていた。
実際、要求に満たない演奏をしている奏者がいたら、離れたプルト*1を2つ指名して難所を弾かせて注意を促すのが恐れられた。「マエストロ」と呼ばないとすぐに機嫌を悪くする、ということも。
怖がられたものの指導は的確で、ブラームスを演奏するのには細かく書かれたダイナミクスの変化をちゃんと行うことが大切などといった演奏上の注意点などを教えていただいたし、なにより本番の出来栄えは満足のいくものだった。大学オケ在籍中では最も印象に残っている。
演奏会での鑑賞では、2021年にチョン・ミョンフンが東京フィルと行ったブラームス:交響曲全曲演奏会でのものが最も目を啓かれるものだった。フォルティシモはあるときまでそれほど大きくなく音量は抑制的。最後の最後、第4楽章コーダで、序奏部で出てくるホルンによるコラールの回想においてようやく最大音量が開放されたときの衝撃といったら…
録音で最も好きなものもチョン・ミョンフンによるもの。こちらは彼が組織したアジア・フィルハーモニー管弦楽団とのライブ録音だ。情感豊かで会場の熱気が伝わってくる。
弾きたい曲
マーラーの交響曲全曲
この記事で紹介したように、マーラーの交響曲はわたしの人生を変えた。演奏会を聞きにいくようになってからは全曲を聞きたいと思い、いつかは彼の交響曲を演奏したいと思うようになったが、なかなかチャンスは巡ってこない。再入学した大学の卒業が決まりそうな頃に第2番を弾く機会が巡ってきたものの、最終的には睡眠障害による体調不良により降りてしまった。
なに、そのうち機会は巡ってくるさ。乗り番ができると乗り番が増える。地元のオケに入団してしばらくしたらオリヴィエ・メシアン作曲 トゥーランガリラ交響曲の乗り番ができ、イゴール・ストラヴィンスキー作曲 バレエ音楽《春の祭典》の乗り番ができ、さらにグスタフ・マーラー作曲 交響曲第10番 嬰ヘ長調(デリック・クックによる補筆完成版)の乗り番ができた。
そうして入団したマーラー祝祭オーケストラでやっとマーラーの交響曲を演奏できる喜びとともにこの曲を個人でも合奏でも弾いている。きっといい演奏になるはず!
www.mahlerfestivalorchestra.com
聞いたことがある曲
モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551
優れた古典は交響曲といえばこれ、というのは多くの人が同意するところだろう。
第4楽章コーダにおいて、今まで出てきた主題や動機を用いたフーガを展開してやがてひとつの主題に収斂していく様はいつ聞いても震える。
演奏会で聞いたものではジョナサン・ノット指揮東京交響楽団による2019年11月23日東京オペラシティシリーズ第112回でのものだった。ピリオド楽器のアプローチをヒントに速いテンポで進むも、モダン楽器による豊かな響きで明晰な響きにより第4楽章コーダをはじめ主題の変化が手に取るようにわかるものだった。
録音ではラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団によるライブ録音が良い。のちのロマン派交響曲に通じるようなテンポと響き。